経営スタイルの変革でビジョン力とマネジメント力の強化を

 

  今日は経営スタイルの考察と題して、経営ビジョンやマネジメントについての考えを記述する。「経営」という言葉で辞書を引くと素直に「マネジメント(management)」と出してくるのであるが、もう少し高い観点が必要ではないかということである。経営スタイルにはどんな要素があるかというと、「ビジョン策定・浸透」+「人・物・金の資源マネジメント」であると考える。すなわち、経営ビジョンを社員に浸透して迅速で効果的なマネジメント力を使って利益を出すこと、そして社会に貢献すること、である。日経ビジネスなどを読んでいると、すばらしい経営スタイルでビジョンを実現している事例や経営者の方々の寄稿が多くのっているが、実際の日本企業では日々の経営(売上・利益・資金繰)に追われているのではないかというのが所感である。図1(経営ビジョン策定・浸透力とマネジメント力)

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まずは、図1を見ていただきたい。縦軸にビジョン策定・浸透力。横軸にマネージメント力を設定している。そして経営陣、企業組織がどのような経営力・経営スタイルを持っているかを線描画している。

横軸:マネジメント力

複数の事業でポートフォリオを組み、事業AからNまで展開される。各事業の中には、戦略レベル・管理レベル・業務レベルのレイヤーでバリューチェーン(RDM研究開発と製品開発マネジメント、SCMサプライチェーンマネジメント(調達、生産、納品、等)、CRM顧客マネジメント(オンライン・リアル等顧客管理))やHCM人財マネジメント、FCMフィナンシャル&キャッシュマネジメントなど本社機能がある。

縦軸:ビジョン策定・浸透力

事業はライフサイクルの中で一定の終結を見るが、企業はゴーイングコンサーンであり事業を組み替えながらも目指すところに向かうわけである。そして、企業の社会的存在価値、すなわち、社会の期待にどう応えるのか?が明示されることがまず第一である。

その価値観を、「正」とするならば、次はそれを全社で共有することになる。共有されるべきビジョンとは「どのような形で価値を提供してゆくのか、どのような姿で価値提供を実現してゆくのか」のメッセージである。

その策定と共有には 強いリーダーシップが発揮されなければならない。ビジョンの策定・浸透力とは、トップマネジメント・経営層がどれだけ強い意志で策定し、それを社員にコミニケーションできているか、である。

経営力カーブ

図1に、表現されているカーブは、経営陣の個々の力の分布カーブである。経営チームは、ビジョン能力が高いCEOや創業者とマネジメント力を強みとする役員層メンバーからなる。

キャリアを伸ばしてMGRからCOO、そしてCEOになるのは一つのキャリアパスと考えられる。ただし人間なので、ビジョン能力が高くなるとマネジメント力が低下するのはやむ得ないし、時代遅れの業務マネジメント力などは忘れた方がいいくらいに世の中の変化は激しいと言える。

大体、ビジョナリーと言われる方は、現場を一度切り離して考えることができるから、過去と断絶した未来を語れるわけである。社員から見て、また、コンセプトだけ描いているよなどという批判を受けるのは前提にある。

3本の線が描画されているがピンク・イエロー・グリーンの順に企業のステージが上がっている。最初は創業者中心でピンクかもしれないが、成長してイエローの第二段階になる。そうすると経営資源をしっかりマネージする人と創業者(CEO)がうまく噛み合う。

最初のビジョンに経験・知見、勉強・思考で、さらに高見のビジョンに昇華できる。強いカリスマになれるかもしれない。グリーンの第三段階。経営陣も成長、変化しCEO、COOなどが役割をはたし遂行レベルが上がってゆくことになる。

日本企業の課題は、どっぷり現場に使ったたたき上げのマネジメントがビジョンを描けるかというとなかなか難しい、ということだ。。組織の中で鍛錬されるうちに業務は丁寧にこなすが発想力に欠けるキャラになってゆく。

まったく斬新な過去と決別したような発想=イノベーションの種とは遠い存在になる。そのような経歴の社長が日本企業に多いのが事実である。(もちろん現場もしているが大胆発想もしている一部の社長を除いて)

 

図2(日ごろの発言からくる立場に違い)
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参考までに、いろいろな経営陣の発言を見聞いていると、マネジャーレベル=できる事、COO=やりたい事、CEO=社会に求められる事 を語っているように感じる。自己の立場か上位の立場かの違いである。

 

図3(ビジョンとマネジメント それぞれの要素)
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もう少し両方の軸の内容に言及しておきたい

マネジメント力

シンプルに言えば事業を成功に導くために経営資源(人物金)をいかに効率的にマネジメントするか、である。KPIは、売上、利益、配当、ROI、EPS、FCF、などでバランススコアカードでモニタリングしてゆく、アクションするということでうまく結果を出すことが要求される。

そして、いかに「経済的価値」を最大化するかが命題であり、そこにおいては研究・開発技術向上や人財スキルの育成が必須である。

ビジョン策定・浸透力

前段でビジョンの策定・浸透力には強いリーダーシップが必要と述べたが、なかなかその経営スタイルを確立し効果を出すのは難しい。リーダーシップスタイルにはいろいろあると考えるが、ここではビジョンを中心にリードをしていくリーダーシップというスタイルを前提にする。そのためには

1) 説明責任を果たし啓蒙活動する必要がある。

リーダーは社員とゴールの共有・価値観の共有が必要である。企業の将来構想、社会に対してどのような価値を  提供するのか、しっかり議論し合う。

2)会社の事は社員の事であると、社員に意識させる。

これは会社人間になれと言ってるわけではない。

人は自分のことと、会社のことを分けて考えてる間は、会社事=他人事だ。上司や役員の陰口を言ってストレス  を解消しているのは良い状態ではない。売上が未達なのは、あなた(社員)の課題である。

JALは、再建に一生懸命になった。稲森氏が素晴らしい経営の本質を指導したという事だ。しかしそこには、  会社のリスク・ピンチは=自分のリスク・自分のピンチだ と認識した社員の心の変化が奮起を与えたと思う。  ピンチの時でなくても、社員が一丸となれるコミュニケーションを作る能力が必要である

3) 多様性の受入

企業の利害関係者はいろいろな考え方や生い立ちを持っている。それを否定するのではなく、また、対立するの  でもなくマネジメントすることが肝要だ。

現場(労働)と経営、男女、世代、国籍、宗教、あるいは 時間軸=昨日の自分と今日の自分 これらの組み合  わせが価値を高め発想を豊かにする。

4) 権限移譲

シンプルに言えば 目標達成をコミットするなら、金は出してやるが口は出さないよ。という経営陣の姿勢。丸  投げではなく、モニタリングや支援は必要で最終責任はやはり経営陣にあり。ということで 上記2)と一体化  して社員を覚醒する。

まとめ

まず、本稿は、経営スタイルにおいて、人物金マネジメントを軽く見ているわけではない。変化の激しい社会で今まで以上に重要性を増している。

そして、経営ビジョン策定・浸透力は、経営計画のお題目の1テーマを超越して、会社の将来の姿を指し示す構想として 深いい議論が必要ということである。いずれにしても1人の経営者で物事が済んでいるわけでもなくチームとしての経営スタイルを持つわけだから、経営層の全員の総和(=経営力)をいかに最大化してゆくかということになる。

経営層より現場の方が強いと言われる日本企業。経営力カーブ(図表)をどんどん右上に上げて「社会的価値向上」になるよう努力していただきたい。