国家ビジョン アベノミクスのインパクトを経営サイドも考察しておこう 

 

<<国家ビジョン(アベノミクスにおける経済成長や財政再建)について考察を試みたい。>>国家ビジョン20130607更新はじめに政治の経営に対するインパクトを理解しておこう という趣旨で 2012年10月に、第一稿を記述した。当時は民主党野田政権時であったと記憶するが、ここ半年強、安倍政権で大きく変わってきたので 本文更新をした。(20130606更新)【国家ビジョン、アベノミクス 財政再建、経済成長などについての考察】経営スタイル(経営ビジョンとマネジメント)の項で、「社員は会社の目標や課題に対して自分の事のように意識できなければいけない」、と述べた。それは 国民の国家に対する意識についても同じことが言えると思う。「国民のレベルが政治のレベル」とよく言われるし、国家ビジョンや課題を理解しないでいると、いずれ、自分の生活やビジネスにも大きく影響がでる。その時に対策が後手にならないようにしたい。board-240136_1280中期経営計画や経営ビジョン策定においても、政府の役割が経済に大きな比重を持つので、政策や財政施策が、無縁ではなく考慮点として重要な要素になる。ここで一つ問題提起してみたい。最近、大手家電メーカーの記事で、円安が105円-107円になったら国内工場を強化し、白物家電の生産を日本に移す戦略をとる、と発表していた。たしかに為替レートは、利益に大きく影響する要素であるが、為替に合わせてあるいは円安を期待して施策をとるのがいいのか?、あるいは、為替がぶれても影響がでない強靭な体質にするのがいいのか? という疑問である。

ということで、少し、日本の現状や国家ビジョンのあり様について考えてみた。基本的主張は、政治も、国家ビジョンを描いて財政再建や成長戦略などの計画立案をし、しっかりマネジメントをやれというメッセージである。

【各政党の理念】

さて、まずは、2012年12月の衆院選当時の各政党の方向性を確認しておこう。

12月時点での 選挙公約では、日々のチマチマした施策をプライオリティもなく議論していたので、10年,20年、さらには50年後に向けて「どういう日本になりたいか」・「どのように経済や財政を進めて行くのか」その主張が良くわからない。

そこで、いろいろと考えを【国家ビジョン】の本質的な要素すなわち政党の理念を出してみたのが、以下の3項目である。

1)自助か公助か、(言い換えれば小さな政府か大きな政府か)

2)国際的な外交政策か日米重視の安全保障・防衛策か、(アジアを中心とした世界観かアメリカ重視か)

3)グローバルエコノミーの中でどうデフレ脱却し、経済成長するか(グローバル経済対応と国内経済の発展)

基本的には、国民の幸福を高め、世界の安定と平和を維持することという理念は疑いないとして、どのようにそれを達成してゆくかということである。a0002_000876

1)の「自助か公助か」の議論は、分配の議論であり、歳入をどう増やすか 歳出をどう減らすかのやり方に大きくかかわる。この点については、次項で記述する。

2) の「外交・安保」は、日米関係、日中関係など 世界の中の日本の役割の位置づけである。

国を守るための国防軍か、卓越した外交交渉力か。近隣からの脅威をどうとらえるのか。 さらに、経済大国としての役割はどうあるべきかとうことである。

この二つの要素で、主張をビジュアル化すると下記の様になる。

3)のデフレ脱却 経済成長、財政再建は 誰が政権に就こうが適切にやるべきである。しかし、上記1)や2)の意見が絡んで さらには 利害関係者や抵抗勢力がでてきてぐちゃぐちゃの状況なのである。

いろいろな記事を参照させていただいたが、最終的には 私の主観で要約していることをご了解いただきたい。

(整理において、右翼、左翼、保守、革新、リベラルなどの概念は、個人個人に理解差があるので使わなかった。)

図1(国民の幸福と世界の安定)

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前回の衆院選挙2012/12では、消費税、原発、尖閣、沖縄、定数削減、子育て支援、所得制限円高、デフレ不況、、など数多くのアジェンダがあった。

まず だれが政権を取ろうと下段の BOX 「経済成長、脱デフレ、財政再建」が、最初の重要課題である。これが出来なければ、政権としての存続が危うい。

そして上段は、政党としての主張で、基本的に2軸のポジションの取り方で、自ずとサブテーマの方向性は見えてくる気がする。(選挙目当ての矛盾した主張がなければであるが)

分配の議論である社会保障は、公助の考え方でやるのか自助の考え方でやるのか、セイフティーネットをどう作るのか?

安全保障・防衛については、アメリカと一緒にやるのか独自のポジションをアジアや世界に訴えかけ始めるのか?10年後20年後への意志を固める必要があろうa1180_001936_m

選挙の結果は、低投票率と小選挙区のおかげもあって、安倍自民党の圧勝となったわけであるが、安倍政権が、まず、金融政策、デフレ脱却、経済成長に重きを置いたのは賢明であった。

民主党は、上段の左側の主張(公的な分配論を中心)を展開し、年金問題や格差で政権をとった。しかし、政権に就いた後、経済成長やデフレ脱却が効果的にできず、さらに震災対応の評価もあり、短命に終わった。

【経済・財政 日本の現状】

さて、ここで、日本の経済や財政の現状と課題を整理しておきたい。下の図2を見てもらいたい。

図2(日本の経済や財政の現状と課題)
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最初に中央部分の現状を述べる。数字は2012年10月頃、2011年の情報を整理したものであるが、いろいろ細かな数字があって、ごちゃごちゃするのでここでは、単純化して覚えやすく、理解しやすい数値とロジックにした。

1) GDP(名目)は450兆円でこれは過去20年550→450兆円を推移している。他の国の様に成長することはなかった。失われた20年と言われるゆえんである。law-419057_1280

2) 歳入(税収など)は40-45兆円しかない。ここではわかりやすく45兆円(=GDPの10%)は取れるんだ、ということだ。

3) 歳出は90兆円以上で、何もしなければ(=削減しなければ)今後も社会負担は増加していく。さらに、今期は震災復興の予算も加算される。

4) 歳出と歳入(税収)の差=不足額は、国債を発行して補う。差額は45兆円。今は必要な歳出額90超の半分45しかない歳入がない。

5) 過去からの国債発行による累積債務残高は1000兆円超。国民一人当たり850万円の借金。GDP450兆円の200%越えで堂々の世界第一位。ギリシャは165%で第二位、アメリカは103%で第十二位。

最近、マスコミでは言われなくなったが、この事実は 安倍政権下(20130606更新時)でも変わっていない。

このような危機的状態を財政再建をするのに、アレシナ教授(ハーバード)は、過去のヨーロッパにおける再建成功例の経験を調べて、「10兆円の財政再建をしたければ3兆円の歳入増加と7兆円の歳出削減をしてゆけば累積財務残高を減少傾向にしてゆくめどが立つ」と論じている。

皆さんもエクセルに上記の条件を入れて1年目、2年目・・、とシミュレーションすると確かにアレシナ教授の言うように、思ったより短い年数で、改善されることがわかる。(国民の一人として一度トライされるといいと思う)。finance-108655_1280

さて、この様な危機的状態を打開してゆくために、財政再建の個別施策の議論の前に 国家ビジョンの議論が 欲しいと思う。

A)【国家ビジョン】=日本をどのような姿に持ってゆき、世界の中で、日本をどう位置付けたいのか。

B)【成長戦略】=GDPを増やして経済を活発にしデフレを脱却し、グローバル経済を主導する。

C)【財政再建】 =【財源】とにかく歳入を増やす。税収を上げる。VS 【支出】=とにかく歳出を下げる。社会保障や公共投資を減らす。

D)【金融施策】=円高の是正 と 金融市場の安定を実現する。

ということで、成長戦略や財政再建を進めなければ日本に将来はない。

そのためには、増税や社会保障削減を大胆にやる必要性もあるが、各層の痛みを最小限にし、経済や生活を壊さないようにしなければならない。

成長がすべてを解決するとは言えないが、成長なくして再建なしということである。

【経済成長】

さて、この後は、経済成長について論じたい。

本質的に成長とはなにか? 健全な経済成長に向かうには どうしたらいいのか? である

図3 各国比較 グローバルエコノミーの中でどう経済成長するか(GDP面積イメージ比較)
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本稿では、「国の経済が成長する=GDPが増える事」と定義している。(アベノミクスではGNIだそうだ。)

「GDP(名目)」=「人口」 x 「GDP/1人」 の関係で、図3の面積が増える事を意味する。

そして2011年統計で、アメリカ スウェーデン 中国、日本でグラフ化して表現してみた。

中国は 人口が多すぎて表に入らないので、図では途中省略になっている。アメリカ(USA)は プロット表示にした。円貨換算金額は、2011年の78円換算で行ったランキングである。

201306現在96円と思うと、今更ながら、いかにも円が高かったと感じる

参考までにビックマック価格を言うと、アメリカ4.33USD、スウェーデン6.94USD、中国2.45USD、日本4.09USD である。2011当時レート比

簡単に各国の状況をふれると以下の通りと考える。

中国:

日本の10倍以上の人口であるが、2020頃から人口増加は頭打ち(横軸には伸びない)となる。が、国家が安定し順調であれば、農村部まで所得が回り消費が伸び始め、図の赤色枠の高さは高くなり面積は大きく広がることになる。横幅(人口)に絶対的大木さがあるので、少し所得が上方に伸びるだけでもGDPは大きく増加する。

課題は、一部の超富裕層による所得占有で、経済成長が損なわれないようにする事が成長の条件である。なん百万円持参して、ヴィトンバッグを買いに来る富裕層と、貧困層の格差はリスクであろう。

アメリカ:

人口増(特に移民政策など)がまだ多少見込まれるので右上上方向に延びる。アメリカは、消費意欲と投資意欲が比較的高く維持される国民性なので上昇する可能性が高い。

若者の起業意欲やイノベーションの意識は強い。

スウェーデン:

すでに成熟の域で拡大の余地はないが、ある程度の所得があり国民の生活は守られる。シンガポールも そうであるが、人口が1千万人程度なので、戦略や政策がやりやすいと考えれれる。

日本:

人口は、子育て支援政策などやるが、全体人口は減る。シングルマザーが一般的でない日本ではフランスの様には人口増加政策は効かない。人口がふえないのだから、生活必需品の様な製品の需要は増えない。

【アベノミクス】

そこで アベノミクスの基本施策について 今日(20130606)までの振返りをすると以下の様かと思われる。

(見聞きした紙面や会話などから私なりの構成を加えたものであり個人的な見解である)

「将来に向けて人々の期待が膨らむすると、実体経済活動もそれに連れて好回転し始める」という効果?を狙う物。異常な円高を是正し、株の評価を適正にして、経済活動を活発にしてゆく。ということの様である。 business-163467_1280

アベノミクスでやられてきたこと

金融緩和 1月22日 政府と日銀が物価上昇率2%目標を目指す

財政出動 2月26日 総額13.1兆円の補正予算

成長戦略 6月05日 成長戦略を発表

異次元の金融緩和の施策は、円安と株高をもたらし、大成功となった。

第一の矢 異次元の金融緩和:貨幣流通量の増加=全ての物に対する円貨価値の低下である。対ドル、対EU、対土地、対株券、対商品、、などで物価は上昇する。

その1:円安の実現

異次元の金融緩和による円安は、自動車、一部電機などの大量に輸出している企業が201303決算で儲かった。

原油、鉱石、小麦、食用油などの高騰で、原料価格上昇となったが、デフレ意識の強い消費者に価格転嫁することはできずにいて、最終消費財の物価水準は低いままである。(ただし、電力会社は素直にコストプラスの包括原価方式で100%転嫁)

その2:株高の実現

株を買っている中心は外国投資家ヘッジファンドであり、国内機関投資家や個人は、それに合わせて売ったり買ったりしている。ゆえにヘッジが少し動くと乱高下する。

「人々の期待が膨らむ」とは、「ヘッジファンドの人々の期待が膨らんだ」感が強く、日本国民は慎重にしていると思う。

株高は、土地と株を持つ資産家が儲かる構図になりるわけである。ただ、ここ(20130606)の株価低下で踊り場になり、不透明になってきた。

財政出動 第二の矢

総額13兆を超える補正予算で結局2013新予算93+13で106兆となる予算を組んだ。おかげで建設業など株価上昇になった。

成長戦略 第三の矢

円安、株高は、ヘッジファンドや外人機関投資家頼みではあるが、とにかく、「期待を膨らませる事」は成功、実現してきた。日本人の個人投資家も、すこしだけリッチな気分になりつつある。

しかし、まだ、日本の実体経済は半年前となにも変わっていないと思われている。そこで第三の矢である。

ところが、第三の矢には、マーケットは、すこし失望した。

アベノミクス第三の矢では、1)女性の活躍、保育所定員40万人増、、、等、2)世界で勝つ、世界大学トップ100に10校、、、など、3)民間活力の爆発、一人当たりGNI150万円増、、等 と述べる。

方向性は、正しいようにも思う。 しかし、目標が語られてない。1)女性活用して何をどうしたいのか?2)世界で勝つ?何の領域で何でをしたい?3)民間活力の爆発って?なにが爆発するの? という質問である。

【まとめ】

以前も記述したが、有識者の会議で言われていたことを中心にまとめると、10年後20年後の日本の姿について、以下の様になる。

技術立国 日本

生産技術立国:アジアの生産の仕組みを日本が仕切る。マザー工場が世界を指導。cpu-447483_1280

特許技術立国:世界の企業が特許を求めて日本に来る。リニアや電子等、東海地域

文化立国 日本

文化芸術立国:マンガ、ゲーム、文学、芸術、スポーツ等の総合エンターテインメント

高度食材立国:農業や食材開発で世界にSEEDSを売り込む。食のシリコンバレー東北

四季観光立国:全てのシーズンに和と体験を共有できる国、沖縄、京都奈良、北陸、東北、北海道、、、、

資源立国 日本

海洋資源立国:世界第六位の排他的経済水域を梃子に

再生エネルギー立国:原発技術の継続と廃炉技術、再生エネルギーの低コスト化と安定化

高齢者資源立国:高齢者活用と高齢者向市場(介護、医療、設備等)のお手本

和橋人財資源立国: 海外で仕事してみる意欲ある若者の国

など、いろいろな審議会や先生方が発言されている。このぐらいのレベル感と方向性があって、初めて「女性の役割は?」、「民と官の連携でファンドはどうしよう」、となるのではないか。internet-273503_1280

第三の矢は 小粒なテーマを数値目標を入れながら小さく総花に並べた感があり、大局的視点が見えてこない。

各国・各時代の大型政策、たとえば、ニューディール、グリーンニューディール、宇宙開発(10年で人を月に送る)、昭和東京オリンピック+新幹線+高速道路 みたいなレベルであり、インターネット薬解禁程度ではない。

どうせいうなら、たとえば、(経営計画風にいうと)

理念

「生涯健康、皆で楽しく、世界で働く、民の国:日本」

ビジョン

生涯健康=生まれてから死ぬまで ぴんぴん健康である

皆で楽しく=家族やコミュニティー参画で生甲斐を持ち、助けあう楽しさがある

世界で働く=自助の精神で働き、世界に貢献する

民の国=国民主権 政治家主権でないし、官僚主導でもない ことの再確認

目標

80歳での健常者率 XX%

幸福度ランキング 上位5位以内

一人当たりGNI?150万円増、海外で働く日本人 XX百万人

施策

地方分権、医療規制改革、大学改革、インフラ(超超高速インターネット網整備、リニア高速網整備)

エネルギー資源開発・・等

みたいな 論理体系の構造と、更には、ストーリーというかシナリオの流れが欲しい。

いきなり国防軍→憲法改正がでてきたり、国土強靭化だと来たり、薬のインタネット解禁、大学に外人講師をふやせ、女性を活かせ!のレベルで単発に盛り上がっても、個々には良いのだが、目指すところや道筋が明確でない。

<地方の役割について>

もう一つ言えることは、上記技術、文化、資源の政策をいろいろ実施するとしても、国でやる部分と地方(道州制)で進める部分の整理と分割は必要であろう。揚げられているテーマは、地域レベルでの戦略が適当と思われるものも多い。

スウェーデンの人口は、日本の12分の1(道州制推進連盟などの言っているのと符合)なのだが、規模の小さいことできめ細かく、また、自由に進められる迅速性・利便性などメリットがある。なにより生活者により密接で、地元のことを真剣に考えている地方に権限移譲し、もっと自由にやれるように中央と地方の権限の配分を見直した方がいい。

沖縄では、シンガポールのように「物流ハブ+観光拠点+税制優遇」で戦略を考えている報道があったがいい例である。九州や北海道は隣接国との連携、中国や東北は農産物強化など、である。そして、もちろん、課題とされている国と県の2重行政の無駄も整理されるべきである。

<最後に 国の役割と企業や個人について>

国の役割は、外交、安保、格差是正、セイフティネット、金融安定などで大事である。しかし、経済領域では、成長への環境つくりと大規模インフラ整備をしっかりやりあとは、企業や地域経済に任せるべきである。

日本は、国家社会主義的ではなく、資本主義理念が基本、政治が主役ではなく、企業や個人がリスクをとってがんばる経済成長の実現しかない。

以上