グローバル化のスタイル 

 

  【グローバル化のスタイル = グローバル企業とは世界国籍企業】

要旨1:

グローバル企業になる覚悟とは、

「日本を超えた世界=世界国籍企業になるか」 OR 「世界を日本色に染めるか」 である。japan-699741_1280 (640x481)

要旨2:

グローバル企業になる自覚とは

市場の世界へ拡大メリットを得る代わりに、多様化した複雑系課題のマネジメントを必死にすると言うこと。

要旨3:

SCMのグローバル化は、まだ、発展の途上の未完成型。module-68955_1280

最終的には、R&D、HCM、世界ブランドの確立を目指す「グローカル世界国籍企業」である。

参照  グローバル人財と人事:グローバルHCMの本質的課題に迫る

追加2013/5/1:

昨今、超国家企業とか無国籍企業と新聞で言われているが、少しイメージが合わない、すなわち、「超」や「無」ではなく、世界各国の国籍を尊重、ベースにしたグローカル企業経営という意味合いで「世界国籍企業」という言葉を当初のオリジナル通り、使うことにした。

以下 本文へ

今日は「グローバル化のスタイル」と題して考察してみたい。1990年代後半以降、「グローバル」という言葉が頻繁に使われるようになった。global-29007_1280

グローバルは「地球規模の」という意味であり、オリンピックがいい例である。ルール(KPI?)は世界で一つ(100m走陸上は秒で計測、幅跳・高跳はcmで計測と世界標準である。IOCレスリング問題でも、イランとUSAが国を超えて一体化し登録要請する。グローバルレベルスポーツだからあり得る景色である。資源開発、文化活動、スポーツ、宇宙開発などが国境を越えたグローバルレベルの活動だ。

このようにいろいろあるが、本稿では、経済・経営の観点でグローバルを論じたい。

グローバル経済は、それを「経済のオリンピック」と表現していた。調達、生産、販売などが世界中同じ土俵で行われ、またその業績の評価も国際会計基準で計測されるようになったからである。

経済のオリンピックの種目とKPIは、

1)CRMマーケットマネジメント、顧客コミュニケーション力 営業力などを競うblue-81847_1280

2)SCMサプライチェーンマネジメント、効率化、最適化 QCDの力

3)R&D研究開発、イノベーション 技術力 コンセプト発想力 開発力

4)FMファイナンシャルマネジメント、資金調達力、関係者へのコミュニケーションとコラボレーション力

5)HCMヒューマンキャピタルマネジメント、文化度、多様化への体力 グローバル人財資産

6)ITマネジメント、情報分析力 活用力、業務プロセス・機能の標準化力

7)経営戦略、インテグレーション力 先見性

といったところであろうか。リスト順番は、事業(あるいは会社)の機能を、上から顧客市場に近い順に並べてみた。そして、企業によってその強さは、まちまちであり日本企業はSCMには、強いが、それ以外はまだまだという感がある。

本稿の構成は、前半(A)はグローバル化のステップとして基本定義をおさらいし、後半(B)では、2000年以降の展開で、複雑化したいくつかの課題を議論してみたい。

 

  【 A :グローバル化の基本的定義 】

さて、国際化・グローバル化のステップを大きく分けるとよく、言われるように次の三段階になる。

第1段階はインターナショナル、第2段階はマルチナショナル、第3段階はグローバルインテグレーションである。

 

図1:インターナショナルモデル
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図2:マルチナショナルモデル

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第一段階 上・左図1インターナショナルモデルを見てもらいたい。

縦軸には前述した種目、すなわち、事業(あるいは会社)の機能を並べている。CRM、、SCM、R&D、FM、HCM、IT、そして戦略である。

横軸には、地域=日本、EUヨーロッパ、USA北アメリカを主な経済主体として位置づけている。

globe-297342_1280このモデルは、1980年以前のモデルで、経済主体となる地域は 上記の3つであった。それ以外の地域は、政治情勢や体制あるいは経済未成熟のために市場としては見られていなかったのである。

企業は本国(たとえば日本)にて生産まで行い、完成品を国をまたいで輸出するモデルである。例えば自動車会社を考えると、本国で研究・開発・設計、部品調達、生産を行い、海外に完成車を輸出をする。現地には、販社を設立する形のシンプルなCRMである。

高度成長期の日本が欧米に比して安価な労働力で生産し、どんどん輸出をしていた時代である。自動車だけでなく半導体、鉄鋼などが躍進し、そして、アメリカとの貿易摩擦を引き起こすこととなった。

第二段階は、上・右図2のマルチナショナルモデルである。

現地に子会社を設立し、一定の範囲で権限移譲をする。本国の分身のようにマーケットマネジメント、生産、在庫管理、財務経理、人事などを持たせる形で1980年代から90年代前半にあったモデルである。日本にも、外資系企業の子会社も多く設立され、日本で上場までされた会社(資金調達まで移譲?)もある。new-york-city-554555_1280

企業にとって、遠い市場へ輸出するインターナショナルモデルは、物流コストや納期遅延リスク(タイムラグ)の問題等もあり現地生産という形になった。自動車会社では、ノックダウンからアメリカローカルコンテント法による現地調達・組立とSCM領域での移転が大きく行われた。また、ITの仕組みや人事制度なども、固有のプロセスや制度を活かす意味で各国に意思決定を任された。

 

図3:グローバルモデルの抽象化バージョン


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第三段階 グローバルモデルの抽象化バージョン

2000年以降になると、マルチナショナルモデルによる各国ばらばら、冗長・無駄、ガバナンス欠如の反省と、ITの強烈な進化によって急速に形成されてきたのが、グローバル(インテグレーション)モデルだ。

このモデルは、各事業のファンクションが世界中で一元管理される。すなわち製造、物流、資金繰り、IT活用などが世界規模で最適化される状況となった。これはERP(基幹システム)の整備展開が進んだことにより可能となった。remote-traffic-397382_1280

CRMは、直接に現地の顧客マーケットと対峙するので固有の部分も多いが、SCMなどはグローバル調達、低コスト実現のための生産拠点、最適物流網と在庫配置、納期管理などグローバル化メリットは大きい。

財務、経理、資金、IT、人事などもグローバル一元管理で成長のための重要な要素となった。ゆえに、CXOという役職が出現し、CIOチーフインフォメーションオフィサー、CFOチーフファイナンシャルオフィサーなどが提唱された。

 

【 B: グローバル企業=世界国籍企業になるということ 規模のメリットと複雑化のマネージ】

前半では、グローバル化の歴史ということでおさらいであったが、実際に2000年を超えて、具体的ないろいろなパターンが出てきているようだ。この後は、グローバル化の課題や事例を中心に話を進めたい。

まずは、世界の環境変化を見てみたい。

1)IT進化と社会ネットワークdata-475551_1280

ITの進化とビジネスモデルの発展で世界が広がった=市場の拡大でありチャンスの拡大である。一方 その分多様性(社会 文化 政治 宗教など)もひろがり 複雑系が整理できない企業は消えてゆくことになる。

経済だけでなく FBやTwitterがアラブの春のようなデモ参加募集を簡単に可能にするなど、社会を変えるツールになった。

2)フラット化

二つ目の要素は、トーマス・フリードマン(経済学者)がいうところの「フラット化する世界」である。ウィキペディア によれば、フラット化する世界=インターネットなどの通信の発達や中国・インドの経済成長により世界の経済は一体化し同等な条件での競争を行う時代にいたると述べる。

 

図4:フラット化する世界

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まさに、経済のオリンピックと言っていた状態であり、新興国でも特定領域(イスラエルのIT産業など)なら一番になれる世界なのである。

日本企業のイメージで描画(上図)すると、左側は、日本お得意の垂直統合すり合わせ技術でのビジネスモデルである。

一方、右側の世界地図の方は、いろいろな機能を世界中一番都合のよい地域に展開し、最適配置で経営を行う。これらのフラット展開は、IT進化と同時に、垂直統合から水平分散=モジュール化=デジタル化=共通化=標準化=グローバル化=フラット化と言うことで実現されることになった訳である。

3)環境変化の振れ幅増大と超高速スピード

世界の変化スピードは、人がイメージするよりずっと早く展開している。中国は想像以上に早く成長し、想像以上に早く成熟しつつある。そしてその動きは 巨大+早い=影響大 となる。ビジネス環境=5フォーセス(供給、顧客、新規、代替、既存自社競合状況)も日々激変し、昨日の顧客が今日は敵の子会社、自社の技術が半年で陳腐化などなど となる。business-idea-660085_1280

さらにビジネス・経済を超えた範疇で、自然災害(洪水や地震)あるいは社会・政治・金融上のリスク(カントリーリスク、為替リスクなど)が発生している。それも 過去の経験値を超えた振れ幅で。

このような中でグローバル戦略を実行してゆくには、しっかりした方針が必要である。反日運動が起きたから、「はいそうですか」と撤収などできない。

 

図5:2000年以降のグローバル化 新興国の追加と複雑化
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R&D HCM 戦略の観点からの論議

よくグローバル企業のベストモデルとして説明されるのは、物の流れ(調達、生産、在庫、物流、納品、検収、消費)を地球規模で縦横無尽に行うサプライチェーンSCMの、わかりやすい事例が多い。また、ITは インドにセンタ-集約とクラウド対応などグローバル企業として当たり前の施策が多くなされている。

一方において、各地域で異なる価値観、文化、慣習、風土に関連する部分は、見えにくい面もある。なぜなら、国民性に関わるような制度や人事の対応が必要となるので、なかなかグローバル化が実現できていない領域であると考えるからである。

そこで 以下では R&D、HCM、戦略の3つの観点からすこし考察したい。growth-453482_1280

R&D 研究・開発・デザインについて

製品と市場:何を どのマーケットに どのように売るかの「戦略の4P」は重要なテーマであるが、その「何を」と「どこで」は R&Dデザイン戦略の課題である。

すなわち、戦略4Pの「プロダクト」と「プレイス」が最初の決定事項なので 以下の図4では その要素を2軸にとって考えた。「プロモーション」と「プライス」は、どのように売るかのテーマなので、優先度を下げた。

 

図6:自動車事例:製品と市場に関するグローバル統合について(日経ビジネス2012年5月ー6月の日産やホンダの記事参照)

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製品と市場(特に中国)のR&D   デザインに関する世界戦略を図示すると上の図の様になる。

切り口はグローバル先進国市場狙いかローカル中国市場狙いか(縦軸),と、投入する製品は世界戦略車標準製品かローカル対応車種固有製品か(横軸)である。

4Pの「プロダクト」と「プレイス」のマトリックスであるが、これは研究開発部隊の組織をどこに持たせるかでその意味合いが明らかになる。

日産では、世界戦略車のデザインを日本・アメリカ・欧州に加えて中国北京にNDCを設置した。これは中国の意識(大気)も世界戦略車に取り組む意図である。(北京を選んだのは、精華大学の人財と、上海よりも中国気質であることが理由)。

しかし、そうは言っても中国市場を意識するのではない。中国の雰囲気も世界戦略のデザインに取り組む時代となったということのようだ。mercedes-587557_1280

年間何百万台販売される世界戦略車は、先進国 日本 ヨーロッパ アメリカなど全世界を見据えて4つのNDCチームが連携して、これを行う。

逆に、中国向け(中国のデザイン感覚をもった購買層)には、(左下象限)ど派手カラーで大きな車体デザインを中国の別会社で設計しローカル現地会社が当面の間 製造する。

家電では、頑丈な鍵のついた大きくて丈夫なボディの冷蔵庫。これらはインドマーケットにの必要要件だが世界標準とはなりにくい。ローカル製品はその文化、その価値観を共有できるマーケットには横展開できるであろう。インド以外にも鍵付冷蔵庫の必要な市場はあるであろう。(左上象限)

中国は新興国においても富裕層に対しては世界戦略車がステータスシンボルとして受け入れられる。(右下象限)

このようにデザイン・開発部隊の設置を新興国(というか将来の先進国)に設置すること。グローバル製品のデザインに新興国の雰囲気を取り込みながらも、既存のローカル市場を攻略するためには、どぎついローカル向け製品も当面作る、という戦略になる。

そのためには、研究開発、生産技術、部品調達における標準化と共有化が R&DとSCMで円滑に行われることが生命線である。

グローバル人事のむずかしさ

次に グローバル化における人事領域での対応について考えてみたい。現地の制度、文化や慣習と 当該企業の文化が絡む分だけ 課題は多く 日本企業は グローバルとローカルの整理が必要である。

1)現地社員の採用とステイタス

autos-214033_1280「グローバル人材がなかなかいない、育たない」は、喫緊の課題である。しかし、日本企業は日本人幹部が2-3年腰掛、すぐに帰国で業績ダウン。現地の国民性・言語・歴史・文化を理解できないでガバナンスしようとしても上手くゆかない。また、優秀な現地の社員を採用したり維持したりもできない。なぜなら、キャリアプランもなく、モチベーションダウンで転職・SNSで待遇の不満が広まって人気もダウン、となる。これでは現地の優秀な学生は採用できない。もちろん、日本の学生も海外にでて現地で働きたいという気概もなくなる。

2)マネジメント人財の視点

日経の記事で、イトーヨーカドーの中国の店舗は、反日運動で被害を受けなかったとの記事であった。そこには、日本人マネジメントの方が、中国社員・取引先はもちろん市長や業界関係者とも良好な関係を持つために長年血がにじむ努力をされてきたとあった。おかげで現地の方々が守ってくれたのである。

また、日本より家族意識の強いタイでは 部品メーカーの日本人社長が社員に対するホスピタリティに専念し生産性の向上、退職防止、モチベーション向上しているケースも紹介された。

現地法人社長が、日本人であろうが現地の人であろうが、現地の文化を理解するマネジメントが必須である。日本人は、現地社長や社員の教育係に徹するのもいいかもしれない。

グローバルレベルでの人事ローテーション、現地社長任命プロセスなどグローバルレベルで社員のキャリアプランを作りたいものである。

最近は、製造業だけではなくサービス業(コンビニ、GMS、塾、紳士服、介護など)がアジア・世界に展開しているのでなおさらである。

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ユニクロは、中国の反日デモの際に、お店で「尖閣は中国の領土」と掲示して日本で問題になった。ユニクロは、政治には中立であるとしているが、日本をイメージしたロゴ(白地と赤四角)で高品質を打って出るブランディング戦略である。その意味では、課題として残るであろう。しかし、ユニクロは、中国展開をさらに積極的におこなっている。

グローバル企業になるという時に、ジャパンフラッグシップを据え置くのか、世界の企業として存在し、グローバル世界国籍企業+ローカル現地企業(=造語であるが「グローカル世界国籍企業」とよぶ)でいくのかである。

アメリカ=グローバルであった時代 すなわち GE、IBM、GMなどアメリカを世界に売り込むアプローチは、アメリカの相対的な国力衰退と合わせて減衰するであろう。

ユニクロはブランドイメージは前者(ジャパンフラッグアプローチ)であり、やったことは後者(世界国籍企業=ローカル現地国籍)である。ネスレ、サムソンなどは後者(グローカル世界国籍企業)のアプローチである。「キットカットはどこのメーカーか?」ときけば、日本のメーカー(森永、グリコ、明治、など)と思う人もいるのではないか?あるいはアメリカの会社?か とか。答えは、スイス会社 ネスレだ。(キットカットには、抹茶入りなど日本仕様がたくさんある)

スイスも韓国も自国のマーケットが小さい以上 自ずとグローバル展開し 世界のローカルになるしかない。特に消費財のネスレは当然である。

複雑性をシンプル化し、かつ、的確にマネジメントしているのが、ネスレ、ユニクロだと考える。

以上 グローバル企業の例を見てきたが、「グローバル企業になるということ」は、いろいろな市場(顧客販売先・調達先・人財・資金金融)の拡大メリットを受ける代わりに、複雑系課題のマネジメントを必死に行うということ。board-223322_1280

複雑系課題とは、

マーケットの激変 = 人口・高齢化 資源エネルギー 為替リスク

誰もが競争相手 = 業種業態の超越 革新技術で消滅危機

経済以外の要素の多様化 = 文化、政治、慣習、宗教

突発リスクの発生 = 事件 事故 震災 治安

など である

そのためにはexecutive-510491_640

グローバル企業+ローカル現地企業=グローカル世界国籍企業 を、明確に意識することではないかと考える。

すなわち、「CRMはローカル現地重視」、「SCMはグローバル世界効率重視」、「ITとFMは最適ポジションに一点集約」、「R&DとHCMと戦略は世界国籍企業としてのグローカルバランス」と考える。

そして、真のグローバル企業は、「R&DとHCMと戦略はグローカルのバランス」に行きついた「グローカル世界国籍企業」なのである。

だから、昨今のキーワードは イノベーション=R&D、HCM=グローバル人財であり、これからは、ブランド戦略としての国籍や文化が問われる。

以上