プライベートブランドPB と ナショナルブランドNB CVS対CPG

<<プライベートブランドPB と ナショナルブランドNB = CVS 対 CPG>>

1:はじめに

ちょっとコンビニエンスストア(CVS:Convenience Store))に行っても、土日にイオンのような総合ショッピングセンター店舗(GMS:General Merchandise Store)に行っても、ここ一年ぐらいやたらとプライベートブランドPB商品が出張(でば=前面にでる)ってきているように感じる。

イオンは2012年のPB売上7千億円・PB売上比率20%を、2013年度は、25%にするとの記事である(20120223日経)。当然、、コンビニCVS各社は 同様の拡大を狙ってくると考える。

なぜ、ナショナルブランドNB商品に対して、プライベートブランドPB商品がこんなに隆盛なのか? そして、それが、特にコンビニCVS業界主導なのか?

shopping-562616_1280今日は、プライベートブランドPB(Private Brand)とナショナルブランドNB(National Brand)の状況を見つつ、「ビジネスに情報活用を推進すれば企業力を強くできる、がんばろう!」というICTベンダーやSIerの掛け声に反して、「大手コンビニCVSの様な、もともと企業力の強い会社だけが、情報活用を推進できる立場に立てる」という論理逆転を考察してみたい。

(閑話休題:余談ではあるが、論理の主従逆転はよくあって、「人口が世界で100億人になったら食料不足になる」という人と、「食料が豊富になったから人口が増加になったのであり、食料がなければ人口は増加しない」という人もいる。Y=F(X)のXとYをどうとらえるか?この因果関係考察は、皆様の判断にお任せする)

すなわち、素晴らしい経営力で企業体力をつけた大手コンビニエンスストアCVS(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの3社)が、同業小売りはもとより製造業(消費財メーカーCPGナショナルブランドNB)の領域に入ってきているのである。

2:PB VS NB (プライベートブランドとナショナルブランド) / CVS VS CPG

さて、まずプライベートブランドPBとナショナルブランドNBの定義を確認しておこう。インターネットなどを検索して調べてみると、「小売業(CVSやGMS)の自主企画商品」とか、ナショナルブランドNBは「国全体に認識されたブランド」とか一面的な表現である。box-592367_1280

そこで、私なりのプライベートブランドPBやナショナルブランドNBの定義として、「企画主体」と「販売チャネル」のマトリクスで整理してみた。

横軸には、「企画主体」、すなわち小売業(CVS)の自主企画商品としてなのか、あるいは、消費財メーカー(CPG)の正規商品としてなのか という軸。

縦軸には、販売チャネル、すなわち全国の小売りチャネルにあまねく供給する販売流通網なのか、あるいは企画に絡んだ特定の小売業チャネル(特定のCVSやGMSの店舗)に限定されるのかという軸、この二つである。

(著者注記:「ナショナルブランドNB」の対義語には、「ローカルブランドLB」がある。これは、まだ全国区になっていない地域で注目されているブランドである。これから伸びる潜在性と中小なりのリスクがあるが、小売りのバイヤーには目の付け所の一つである。また、プライベートブランドの類似語に「ストアブランド」がある。これは、小売りが低価格訴求追求した二流品的ブランドの意味合いで使われることが多い。本稿では、対比軸を多くすると複雑になるので、プライベートブランドPBとナショナルブランドNBの軸で話を進める。)

図1 プライベートブランドPBとナショナルブランドNBの企画主体と販売チャネル
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まず「ナショナルブランドNB」は、消費財メーカーが企画をし全国チャネルで販売する。=右上象限

一方対局として、「プライベートブランドPB」は、小売りが企画をして、自らのチェーンで販売する。=左下象限

小売りの「プライベートブランドPB」は、自社のチェーンを超えて、他社にも販売するとなるとそれは「プライベートブランドPBのナショナルブランドNB化」である。=左上象限、

イオントップバリューは、年商7000億円の売上を1兆円に拡大しようとしているが、グループ持分法各社(マルエツなど)に展開することを前提にしていると考えれれる。

まだそのような事例は、イオンやセブンアイ以外は、あまり出ていないと思うが、可能性としてあり得る。(なぜなら、流通は誰もがメーカー、誰もが小売りの時代に入っているからである。)

一方、消費財メーカー企画商品を特定のチャネルで販売する。これは消費財メーカーが主導する小売の「企画協力プライベートブランドPB」である。wheat-beer-159789_1280

ちなみに、セブンプレミアムでは、製造メーカーの名称を出しているが、これは企画主体がセブンイレブン=小売なので、左下象限ととらえたい。

さらに、分類軸は、もう一つあってブランド付与のレベルである。プライベートブランドは、もっぱら販売チャネル全体のブランドである。一方、消費財メーカーのナショナルブランドは、企業ブランドではなく製品ブランドである。従って、そのブランド戦略には、当然であるが違いがでる。

3:プライベートブランドPB 過去からの経緯

もともと、プライベートブランドPBはナショナルブランドNBの真似をして製品開発(パッケージも似たもの)し、ナショナルブランドNBのブランド力を利用して、消費者の誤認識を生んで買わせる「せこい販売形式」のイメージ(=ストアブランド的)であった。(まあ、他国のキャラクターパクリと同じような発想である。)

ナショナルブランドNBを構築するには、それなりに時間と金がかかっている=オーソリティである。コマーシャル、消費者調査、キャンペーン、チャネル開拓 などなどナショナルブランド構築・維持コストは少なくない。

有名な話では、イオンがネスレのキットカットと似たプライベートブランドPB製品を作り、店頭の棚に本物を少量とイオンPB商品を大量に並べた。そのプライベートブランドPB商品がナショナルブランドであるキットカットの模倣イメージであったために、ネスレがクレームし、ネスレは全商品の取引停止を要請をする事態となった。

choco-146230_1280キットカットブランドは、受験生対応、抹茶対応など様々な努力を経て日本にナショナルブランドを築いてきた。当然、ブランド価値は高い。イオンが、安易に自社プライベートブランドPBを並べるのは、ビジネスルール違反とも思え、他国におけるコピー文化と同じ様な感覚であったのだろう。

結果、イオンとネスレは、もめごとの経験から多くを学びとり、取引関係改善と合意がなされ今がある、という話である。プライベートブランドPBとナショナルブランドNBのあり方に一石を投じた話と言える。

もっとも、いまでもナショナルブランドNB商品にそっくりのパッケージのプライベートブランドPB商品を出している企業もある。どことは言わないが、ナショナルブランドであるロッテの商品にそっくりのパッケージや、アサヒドライにそっくりのデザインによるプライベートブランドPBビールなどである。

4:コンビニエンスストア CVS 今日の隆盛

4-1) 震災以降の社会の流れ

CVSは、震災後、インフラビジネスとしてその地位を確立し、店舗は近くにあって、便利なものはなんでも販売するし、金融・物流・行政・郵便・クリーニングなど各種サービスも提供する業態となった。

若者の車離れ、高齢化によるご近所商圏、低賃金OLの内食指向、IT化によるサービスの充実、そして決めてはデフレによる低価格指向が、CVSを大きく成長させた。(アベノミクスで、上向きつつもあるが、必需品(食品や日用品など)では低価格指向が続くであろう。参照サイト:景気低迷の日本

コンビニCVSは、流通の根幹をなすビジネスだから「インフラは大手3社あれば十分の原則」どおり、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートが勝ち残った。4位以下はいずれ吸収されてゆくかもしれない。

さらには、総合スーパーGMSや地方スーパーの領域もコンビニが、出てゆくことになろう。故に イオンも都心につよいダイエーを手に入れたいのである。

(参照サイト:流通業態の変化

4-2) 商社を巻き込むグループ力

国内では物流網も整備され、全国にセンターを最適配置し店舗配送の効率化ができている。holland-89589_1280

このように力を持ち、勢力発揮に大きく影響しているのが、商社の存在であるのはご存じのとおりである。資金力や原料調達力で圧倒的に優位に立つことになった。

調達の例では、セブンイレブンは、アメリカのブドウ園でワインを製造・買付し、日本に樽で輸入してメルシャンに瓶詰させ、CVSやGMSで売る。それも600円以下でおいしい米国産ワインをである。(日経記事20130205参照)

下記の図は、CVSと商社の関係を表したものである。(日経業界地図2012年参照)

今、商社系列で整理されつつあるのは、CVS・GMSであるが この後はドラッグが整理されてくる。

図2 商社との連携 勢力図

(20130327追記:イオンのダイエー買収でイオンが一勢力(円型)の形をもつことになるであろう)
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4-3) やっと始めたPOS情報活用

情報活用という観点では、小売りはPOSデータを持っているが、以前はそれが宝の持ち腐れであった。一部は、消費財メーカーに売って小銭を稼いでいた程度だ。

ところが、ここ数年、これを自社で活用するようになりその成果がでてきた。そして、消費者のニーズが「すこしだけではあるが!」わかってきたことにある。

これはIT進化、特に高性能で廉価なBIツールの出現やビッグデータ活用が分析を可能にしてきた。

4-4) PBプライベートブランド戦略

昔は、ナショナルブランドNBを猿真似するプライベートブランドPBであったが、最近は分析による商品企画が「多少」でき始めたということである。

そして、小売(CVS、GMS)の本心は、「売れる商品をなかなか作ってこない消費財メーカーや、いい商材を提案してこない卸などに頼ることなく、俺たちが企画した方が消費者にアピールできる」と自信を持ちつつあると推察する。

もっとも、その様なことを言えるのは、体力のあるCVSの上位3社であとは、四苦八苦しているし、中小小売りは逆に格差をつけられて危機感を持っていると思われる。(追加:アベノミクスで賃上げをコミットしたのは、上述CVS3社そのものだ。)

5:プライベートブランドPB と ナショナルブランドNB の コスト構造について

図3カップめんの価格構造日経業界地図2012年度記事参照
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ナショナルブランドの構造             プライベートブランドの構造
上図3を見てもらいたい。(日経業界地図2012年度記事を参照)

カップめんの価格構造、ナショナルブランドNB商品とプライベートブランドPB商品で比較したものである. (調査は日経MDによるインタビュー調査とのこと)

ナショナルブランドNB商品は販売価格130円 プライベートブランドPB商品は販売価格80円である。

a0002_001105私なりに、原価要素毎に 比較をしながらコメントを試みる。

プライベートブランドPBの原材料費は8円安くなる。これは商社の調達機能を使って安く購入したり、購入量をコミットしたりして原価低減を図っていると考えられる。ナショナルブランドより売れ残りリスクもなく材料廃棄も回避できる。

拡販費・広告宣伝費は、もともと自社小売チャネルだけの販売と決まっているので多くは必要ない。プライベートブランドPBはナショナルブランドの様な商品固有の認知向上努力をしなくても A社のプライベートブランドPBは 安い+安全+安心 +おいしい+身近で買えるという全体イメージでいい。現に日経BPブランド調査でも上位にあがてきている。(20130322日経)

ナショナルブランドNB商品の価格の30%を占める販促・広告宣伝費などは、どこまで必要なのか。という問題提起である。

プライベートブランドPBは、物流費もメーカー直送を実現して節約できる。CPG=ナショナルブランドは、自社倉庫、卸倉庫、小売倉庫と転々とする物流を改善しプライベートブランドPBの上を行く効率化を実現できるか。

ナショナルブランド製品といいながら、微妙に異なる品目コードを入力管理する手間をどうするか? など課題は多い。

そしてプライベートブランドPBで、もっとも大きくカットできるのが、メーカーと卸の利益部分にある。基本的には、メーカーに生産委託する分の金額を確保しておけば充分であり、メーカーに余計な利益を拠出する必要はない。そして卸とメーカーの利益を削減した分、小売りはご利益を増加することができる。

プライベートブランドPBは、小売の自社利益と 消費者の低価格利益を、ナショナルブランドにたよる卸・メーカーの利益削減と販促費カットから捻出する構造である。

6:消費財メーカーの課題

これほどまでにプライベートブランドPB商品が流通しているということは、消費財メーカーCPGのナショナルブランド戦略にもやはり問題があったと言えるであろう。coffee-161622_1280

以前、消費財メーカーの人が、「一年に500品目ぐらい製品出しても、1つか2つしか当たらないぐらい難しいことなんですよ」と、自慢げに言っていたことを思いだす。

難しいこともわかる、大変なこともわかるが、それが課題(解決すべき問題)であると認識せず、1/500が当たり前の意識(口では問題だと言いながら本心では思っていない状態)が、ナショナルブランドの隙となりプライベートブランドPBにつけ込まれることなったのではないか? (参照サイト:問題解決スタイル

研究開発・製品開発は自分達にしかできない難しい仕事、小売りの連中にはできないと高をくくっていたのではないか?

あわせて時代は、デフレで低価格指向、ITの進化で消費者は情報をもつ賢さを身に着けた。 安くていい物であればナショナルブランドでなくてもプライベートブランドPBでOKという状況が形成されたのである。

では、どうするか。

1)「オンリーワン品」と「コモディティ品」はCPG自社ナショナルブランド でいく。

2)「いい物安く品」はPBブランド協業 という棲み分けなどが分りやすいと考える。

それを図示すると 図4になる。別の項「QPハンター」で説明しているが、その象限をそのまま適用できる。

(参照サイト:QPハンター

図4
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<<消費財メーカーの選択>>右上第一象限 CPG=ナショナルブランドNB <オンリーワン品目=価値こそが競争力の商品>

高品質高価格帯では、消費者のウォンツ=嗜好性ある欲求 にピンポイントで合わせる。(質・価値で稼ぐ領域)これができない様では消費財メーカーの存在感がない。左下第三象限 CPG=ナショナルブランドNB <コモディテイ品=価格こそが競争力の商品>EDLP(エブリデーロープライス)低価格帯では、必需品として強いナショナルブランド定番を確立する。国内市場、さらにできればアジアやグローバルでも通用する定番を消費財メーカーが主導する。量・規模・効率で稼ぐ領域。この領域の小売プライベートブランドPB繁栄は、流通全体の無駄、消費財メーカーの無駄につけこんだ低価格=上流の怠慢ゆえである。商品企画の卓越ではない。 だから、CPG:ナショナルブランド商品が流通の効率化を、リードできるようになるか。あるいは、Web ECビジネスへの食い込みで展開で、CVSインフラ店舗に対等に競争できるようになるのか がポイントになる。。そして、左上第二象限 小売=プライベートブランドPB協力生産 <「いい物安く品」=コスパこそが競争力の商品>低価格だが高品質帯は、小売りと協業して、需要の確定したプライベートブランドPB生産に協力する。この象限は、いい物安くである。しかし、オンリーワンにはならない。一時期、教室中でユニクロを着ている状態があったと聞くが、「いい物で安いから満足」という合理的商品である。希少性でアピールはしない。a0008_001880

そう、プライベートブランドPBはSPA(コラボ型SPA)なのである。違いは、中国メーカーではなく大手消費財メーカーであったりすることである。ゆえにコラボレーションが必要になる。(SPA:Speciality Store Retailer of Private Label)

以上をやれば、消費財メーカーはコンビニの棚を自社のナショナルブランドとプライベートブランドPBの合わせて、多くの棚割りフェースを取ることができる。

(現にカルビーのポテトチップスは セブンイレブンCVS店舗のなかで 棚の上段にナショナルブランド、目の高さより少し下のいい位置に製造元カルビーと表示されたプライベートブランドが数FACE配置され、かなり大きくスペースを占めている)

7:最後に、あるべき姿の考察

7-1)流通業界 消費財メーカー・卸・小売の連携バランス

国内の消費財流通業の経常利益率の全国平均(中小もいれて)は、メーカー3%:卸1%:小売2%である。これが、プライベートブランドPBの隆盛で小売(とくにCVS)へシフト、すなわち、2%:0.5%:3.5%(数値はイメージ)になろうとしている。

しかし、本当に期待すべきは 3%:1%:2% が 4%:2%:3%になることである。流通業全体が価値を増し、全体の経常利益額を、増加することである。

消費財メーカーは、小売りのプライベートブランド製造下請けになってしまってはいけない。製造業(=製品・商品企画開発)こそが主役なのである。クリエイティブな製品開発は、小売りではなく消費財メーカーにしかできないと考える。

7-2)インフラとしての小売りと消費財メーカーへの期待

一方的にインフラ(=小売CVS)が強くなると、消費者の選択肢がなくなる事は、電力会社事例で、証明済みである。

コンビニCVSに行っても、プライベートブランドPBばかりでは、消費者には選択肢がないし、メーカーには競争がない。洗剤を例にとれば、花王とライオンとP&Gとリーバ等がナショナルブランドで真っ向勝負・競争してもらいたいのである。

いわゆるコモディティの必需品(一般加工食品や日用品)では、コンビニなど小売りがわざわざ新しいプライベートブランド企画を立てるまでもなく、本来は、消費財メーカーが安くて強い定番をもってその役割を果たさなくてはならないのではないか。

プライベートブランドPBは、自社チェーンの顧客情報がある+統計分析が成立する+セグメントが絞れる+需要が読める+店の数がある+天候を予測+イベント確認などで売れ行きが読める。専売だからコマーシャルは必要ない、常連だから認知作業もない、無駄な在庫もない、売れ残りもない、返品もない。すなわち、小売りと消費財メーカーのコラボで、ユニクロモデルを真似すれば良い。

高付加価値商品は、消費財メーカーの出番である。商品開発力・イノベーション、それを逃してはいけない。アップルiPhone・iPadのような商品を作ることである。(QPハンターの項も参照)

そうすれば、消費者は、ニーズやウォンツに合わせた選択を経験できるようになる。

以上 個人的意見であるが、プライベートブランドとナショナルブランドの攻防について、思うままに記述させていただいた。