グローバル人財とグローバル人事 企業のグローバル化の進展において SCM統合からHCM統合がこれからの中心課題になる

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1:はじめに

グローバル化の進展において SCM統合からHCM統合がこれからの中心課題になることをグローバル化のスタイルで考察した。(グローバル化のスタイル参照)

そこで、最近グローバル人事、あるいは、グローバル人財育成のセミナーと題した幾つかのセミナーが開催された。ので少し情報収集をしようと思い、一つに参加した。

去年4月の大手企業の社長の訓示には、「世界の動きを敏感に察知する感性を磨いてほしい」(三菱商事)であるとか「物事を国際的な視点から考えることができる国際人になってほしい」(キャノン)であるとか、「自らグローバル競争に打って出て次の成長を確かなものに」(シャープ)など、新入社員に対してかなり高い目標のグローバル人財になるよう意識させている。今年はもっと多くグローバル人財が訓示されるだろう。

このように企業がグローバル人財を育成しようと真剣に考えているということで、「グローバル人財育成・教育」をビジネスにしようと著名なヘッドハンター企業・有名英語研修機関から有象無象の英語塾の会社までいろいろとセミナーやパンフレットでアピールしている。

このようなセミナーでは、主に日本人社員をグローバル人財に仕立てようとすることにフォーカスが当たっていて、必ずしもグローバル企業としての人事を論じているわけではない。グローバル企業として日本人を含む国際人の全社員のキャリアパスを考えているというものでも無い。

今や大手のグローバル企業は、日本人の社員数以上に外国人社員の数の方が多いところが目立つ。

このように考えると下の図に示したように、多様な切り口で全社員のキャリアパスを考え、それを戦力として有効に活かしてゆく作戦が必要である。まずはこの後、人財配置・グローバルモデルの視点で論じてみたい。

2:企業のグローバル人財配置のフレーム

図1 グローバル人事フレーム
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図1を見ていただきたい。

立方体で人員配置を表していて、高さは企業における組織階層を示している。

一番下は、現地現場業務(あるいは本社現場業務) 、中段は現地あるいは日本の経営層を表している。そして、その上の緑の層は、グローバル経営層で人数的にはそれほどいないが、世界中を統括するチームである。

横幅は、地域展開を示している。右側のピンクは日本本社(とくに日本でなくてもいいが)を示している。左からの青・・・・黄色ボックスまでは、現地子会社あるいは地域統括を示しており、世界中に展開する製造子会社や販売子会社を表している。

奥行きとして幅を持たせたのは、その中には、日本人や外国人、男性と女性、日本採用や現地採用、あるいは、新人採用や中途採用などというような多様性の幅を示したいからである。

3:キャリアパスのあるべき論

シンプルな日本企業であれば、ピンクの中における現場と経営という切り口で考えればよい。外国人を配置することもなくは、日本人ワールドの議論で十分である。緑の上位層=グローバル経営層も必要ない。社員のキャリアは
ピンクの中でしっかり考えればよい。

図2 グローバル人財のキャリアパス
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さて、グローバル企業となると社員のキャリアパスもバラエティに富み、複雑になる。

2-1:日本人の場合

まず、日本人(赤色太線矢印)について考えると、日本本社(ピンク)の現場(下段)で修行を積み、英語覚え、マネジメント(中段)しながら国際感覚を見つけ(この部分がセミナーの売りの部分)、そして海外子会社(青や黄色ボックス)の現地経営層(中段)として赴任する。

その後、一か所の赴任先で一生過ごす人(グローバル化スタイルの項で述べたセブン&アイの中国担当の経営者の方や、サムソンのグローバルアサインメントの仕組みなど)もいれば、現地子会社の経営者として3年-4年経験し、転々と現地法人異動する人もいる。もちろん、現地経営を経験した後に、グローバル経営層に昇進する人もいる。

大抵はこれのどれかであろう。海外に出て、また、日本国内のマネジメントに戻る人も中にはいるであろうが、語学力や海外経験のほうが海外アサイン理由として重視されるので勢い同じ人に集中する。要は人財不足なのだ。

一方、海外現地採用の日本人というのは、まず少ないのだろう。従ってそのキャリアパスのイメージもあまり明確でない。本来、日本の若者が 世界に出て「和橋」と言われるような力をもって海外で活躍してくれることも期待したいところである。

2-2:外国人の場合

さて、外国人(青色太線矢印)に目を向けてみると、いろいろなパターンはあり得るはずが、なかなかリアルには実現していないというのが現状である。

外国人キャリアとしては、現地子会社に採用され、現場業務担当をして、そのご現地の経営層になり、そこからグローバル経営層に昇進する。この場合には、自国の経験重視なのでマルチナショナルモデル(グローバル化スタイル参照)の人事制度に近いものがある。

更なる発展系は、現地子会社Aに採用され、A社の経営層を経験したりそれ以外の海外子会社(たとえば黄色のN)の経営層にアサインされて成功するなどして、グローバル経営層に昇進する。

企業としてグローバルを標榜するのであれば、日本人も外国人も、分け隔てなく幅広いキャリアパスを準備しておくのが グローバル経営としての成功への道である。

ネスレなどは、エグゼクティブタレント(グローバル経営層候補)を国籍を問わず育成し経験をつまさせていると聞く。(ネスレ:150国籍の社員28万人、9国籍の経営陣というスイスの食品会社、水の商品ブランドで70以上というローカライズ戦略などで有名、2012年資料)

3:クロスファンクション連携での英語力

図3 ファンクションの軸

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楽天の英語公用化の話が一時期話題であったが、その本質はだんであろうかと考えていた。そしていきついたところは、「グローバル企業では、“現場レベル”でも世界中で会話する必要がある」ということである。

SCM,HCM、ITM、CRMなどなど クロスファンクションで情報共有しプロセスを連携したり、いいところを取り入れたりというのが、グローバルの価値だということである。 したがって、業務レベルでのコミュニケーションのために、全社員が英語をTOEIC750以上ということなのであろう。

製造業でも今後 日本の向上はマザー工場で アジアが本工場ということになれば、マザー工場の現場担当が英語でコミュニケーションできないとアジアからの研修生の教育にならないということである。

(閑話休題:国家公務員総合職にTOFELをというニュースが突然でてきたが、楽天に刺激されたのであろうか? 国家公務員における英語スキル要件とはどのような物か、そのうち考えてみたいものだ?)

4:人財スキル

最後に 人財スキルの視点である。すなわち、グローバル人財としての素養とスキルである。

セミナーでは、リーダーシップだとか多様性だとか、いろいろとプレゼンテーションされているが、私は基本的に重要なのは 以下の2点であると考える。

4-1「言語を超越したコミニケーション力」

もちろん英語や中国語はある程度できなくてはいけないが、しかし言語は2番目である。

1番目の力は、相手に伝えようとする力である。相手をを理解しようとする力である。そのために、言葉はもちろん、絵、写真、歌、画像、パワーポイント、スライド、フリップチャート、ホワイトボード、スクリーン、テレビ、
映画、ジェスチャー、笑顔や表情、電子辞書、iPad、自動翻訳機など、利用できるものはすべてを利用対象に入れたうえで、有効に伝える行為ができるかである。(紙とペンとiPadがあれば、英語ができない外国人社員とでも一定のコミュニケーションはできる)

4-2「全く異なる文化・慣習を理解し寛容できる力」

現地に行ったら現地食材(ワニ?とか)が食えるか、インド映画の踊りを踊れるか、現地社員家族(一族)と楽しく会食できるか、家長がだれか誰が一番偉いかわかるか、女王や王族に礼儀正しく挨拶できるか、取引先の冠婚葬祭にでてうまく振る舞えるか、現地市長・町長・警察署長などと仲良くなれるか、などなど俺にはできないと言わないように いられるか
である。

もちろん価値観を合わせろというわけではない。相手をわかり相手と一緒に苦楽を共にできるかである。

よく言われるテーマでは、「リーダーシップ」「日本人としてのアイデンティティ」「専門的スキル」「事業構想力」「多様性」「ファシリテーション」「英語その他の言語」などがある。

これらは、グローバルであろうとなかろうとコアスキルとして、マネジメント素養として当然に必要なものであって、グローバル人財固有のものではない。逆に言うと、グローバル人財教育と称して、日本の教育制度の足らない点を補う。従来の教育システムでは満たされていないということの悲しい証明である

5:日本のグローバル企業の人財関連の課題

最後にまとめとして日本企業の課題を、気が付くままに述べておきたい。

5-1 人事アサイン

人選:日本企業の人事は、まだ日本を中心に指向している。したがって、現地経営層にアサインされる社員のレベルがベスト人財の投入でないのではないか。現地マネジメントがB級であれば、その下につく部下はC級になる。

赴任期間:さらにそのアサインは、2-3年で帰国したり、他国の異動してしまい、真の課題解決や戦略遂行などできない(どこかの国の首相のような)状況である。これでは現地法人のビジョンや戦略が徹底されず、社員の居心地も悪い。このようなアサイン形式であれば日本人は相談役+教育担当が適任で、経営TOPは現地のマネジメントがいい。

5-2 アジア日本企業の現地採用

図4 アジアでの日本企業
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<アジアの新人には、IITやNUSで素晴らしい教育を受けている人たちがいる>現地採用:当然に、現地の新人採用で 優秀な奴は入ってこない。現地で日本企業に入っても上述したようにキャリアパスが描かれていないので夢が持てない。そして退社。欧米や韓国の企業にハンティングされてゆく(アジアでは、半数以上の社員がヘッドハンターから狙われている)。海外人財の目から見て、仕事や企業に魅力を感じされない、それは、ビジョン戦略も不明確で昇進には見えない天井(グラスシーリング)があるためだ。現地採用の新人は、定着率も低く、辞めた人がネガティブイメージを持つ。現地日本企業が現地欧米企業のトレーニング会社になっている。現地における日本企業のイメージ向上が必須となる。5-3 グローバル経営層にも課題がある。人財登用:CEOが、次期幹部やマネジメントの育成に時間を使っていない。多様性欠如:日本人中心、それも男性中心が多いのではないか。IRの役員一覧リストをみても、グローバルボードに外国人がいない日本企業は結構 多い。5-4 では、どうする。

1) 人事部が、グローバル人事部になる(グローバル人事のセミナーにきて外国人講師の講演で通訳イヤホンをつけるな)。

2) CEOが、人財把握やアサインに時間をつかう。(ラッセルレイノルズの方のコメント、本稿記述においてはラッセルの方の講演にインスパイアーされた部分多く感謝)

3) あと少し頑張れば、開花するであろうハングリー社員を、海外でチャレンジさせる。

4) 外国人(アジア人財など)をマネジメントレベルに多数アサインする。味の素は、26か国の現地法人の取締役ポスト220の50%を外人にする予定。

5-5 つまるところ

グローバル人財の議論で見えてきたことは、SCMのグローバル化ができてもHCMのグローバル化ができないと、世界での戦いで苦戦し、いつまでもシュリンクする日本市場頼み経営から脱却できない、ということのようだ。

以上 個人的意見であるが、思うままに記述させていただいた。