成長と雇用のスタイル

<<成長と雇用のスタイル>>

はじめに

「企業の成長」とは何か? 成長戦略の原点とそこから派生する雇用の問題について紐解く。

別稿の「国家ビジョン」で、人口減少トレンドに入った日本では、人口依存の市場拡大を期待することは到底できないことを図示した。

(参照サイト:国家ビジョン

また、「人生、誰もが二毛作」では、日本の終身雇用制度と年功序列給与、そして能力の囲い込みが、雇用の流動性と最適配置を不可能にしていることについて言及した。wheat-field-640960_1280

(参照サイト:人生二毛作

弊社のホームページのアクセスでも「人生二毛作」の検索ワードは非常に高い順位である。昨今、「追い出し部屋」や「解雇規制」が話題になることが多いが、読者の方々も関心を持たれているのだと思う。

そこで今回は、成長戦略とは何か、量を増やす成長、生産性を上げる成長、新規分野に展開する成長などの成長戦略のスタイルをとらえ、コンビニエンスストアなど実現している成長戦略を観察する。そして、成長スタイルにおける雇用と能力について、考えてみたい。

【A:成長戦略のスタイル】

成長とは、business-163501_1280

マクロ的には、【国内総生産GDPの増加=(人口増加)x(一人当たりGDP生産性向上)】がその要素である。

コンビニ業を例にミクロ的に言えば、【コンビニ会社の売上増=(店舗数拡大)x(従業員社員1人当たりの付加価値増加)】ということになろう。

すなわち、【成長=規模拡大 x 生産性向上】である。

日本経済は、年寄り社会(高齢化・少子化・人口減少)であり、成長ホルモンを突っ込んでも背は伸びない。ソニーの会社年齢は65歳超である。やるべきは、新陳代謝を高める事であり、若い産業を生み育てる事である。

それでは、成長のスタイルを順番に見ておこう。

A-1:高度成長期から成熟期へ  ==量を増やす成長==

高度成長期(昭和40年代以降)は、人口が伸びる=市場の拡大であった。

図1
growth1

 

前提を置いたモデルの説明

市場(国と言ってもいい)の国内需要が、1200ポイントある。これを、青色の枠の面積で表している。

1)最初に、会社は、社員60人で一人当たり10ポイント=付加価値の合計600ポイントを生んでいた。会社の付加価値=供給を赤枠の面積で表示している

2)まだまだ、売れ行き好調で、会社は、従業員労働者を40人採用し、工場を作って400ポイントの付加価値増とした。

3)さらに市場開拓余地があるので、20人採用して200ポイント増、結果として、合計=1200ポイント付加価値(120人x10ポイント)までに拡大した。

4)さらにグローバルまで進出する勢いとなったglobe-297342_1280

しかし、国内限定でいうと1200ポイントまで来ると市場飽和(青色面積埋め尽くし)である。ゼロサム社会となり、供給者間のシェア取り合い競争が発生し、一方の成長はもう一方の減衰になる。

需要(=消費者人口)の増加時期には、大小はあるものの誰もがプラスの伸び率を作れる。だから、1業界に10社も生き残れてきたわけだ。

需要減衰(=人口減少)社会では、市場の縮小と競合敗北の両方のマイナスを担い淘汰(通常M&A)される。(銀行、鉄鋼、通信、テレビ製品の家電業界などをご覧あれ、国策にもすくわれたが)

A-2:成熟期 効率化と最適化 ==生産性を上げる成長==

図2
growth2

 

当然、生き残り真剣企業は、BPR、ERP、SCM改革(工場統合など)で効率化を図り、一人当たり生産性向上を実現した。

一人当たり生産性が10ポイントから12ポイントになり、1200ポイントの需要を埋めるのに120人ではなく100人で可能となる。

A-3: 市場開拓路線 ==量を増やす成長=高度成長アゲイン==

そこで 成長路線は  製品の機能強化で 買い替え需要や追加需要を起こさせようとする売り上げ増がチャレンジになる。テレビ製品など家電は、高機能化買い替えと2台め3台目を期待する。

図3
growth3

 

既存事業を技術依存で伸ばすことであり、過去資産も活用できるし、アプローチも実践で証明されている。リスクが少ない。社員の再教育やリストラもしなくていい。

しかし、同業者との競争、顧客との競争があるから厳しい選択でもある。

地デジとエコポイントですでに飽和した市場にたいして、3D、有機EL高精細画面、省エネなど機能強化で、買い替え需要を起こさせるのは大変だ。さらに同業も似たような強化と拡大路線をとってくる。

大体が、一定の飽和状態まで行くと、人は、ろくでもない無駄なことを始めてしまう傾向がある。役に立たない仕事、過剰な仕事にしがみつく。過度なスペック製品で、もうこれ以上いいだろと、行き過ぎた資本主義みたいな製品ができてくる可能性がある。

A-4:新規ビジネスだ。イノベーションだ!が?==新規分野に展開する成長==

図4
growth4

 

スマートな経営者は、新規ビジネスの領域にチャレンジし、ビジネスや雇用を拡大できる。

コンビニエンスストアCVSの解かりやすい例で見ておきたい。

1) まずは、店舗数増加が第一歩。

2) 飽和といわれ始めたころから、お弁当やPBで売上拡大、利益確保。(参照サイト:PBとNB

3) そして、新規ビジネスモデルとして、チケット販売、クリーニング受取、公共料金収納、ATM、コピー     FAXサービス、宅配便取扱など

流通+全国店舗展開というインフラを最大限に活用し、銀行まで設立して、成長してきた。

ワタミの介護ビジネスなども、福祉介護に人材を採用して、成熟産業から成長産業へ人の流動性高めて社会的に人材配置の最適化を行うこととなっている。

しかし スマートな経営者は すくない。故に 雇用の問題が表面化してくる。余剰人員である。

【B:雇用と能力のスタイル】

図5 追い出し部屋
growth5

 

先ほどの例でいえば 20人は、必然的に、企業内失業になる。

そこで、雇用されている社員や従業員の、ポジションを能力と優遇の視点で考えてみた。

図6
growth6

 

<ここで「能力」を横軸に取ったが、これにについて踏み込んでみる>B-1:能力とはなにか?普遍的な物と相対的な物があると考える。1)相対的能力:それは会社に合う、役にたつ ということである。図6で 実力・能力を横軸に適用したが、正確に言うと、帰属する企業の求めるスキルにあったスキルをもち、力を発揮しているか? ということになる。わが会社に有名スポーツ選手がきても、マーケティング目的の知名度向上にはなるかもしれないが、業務遂行や経営管理で成果を上げるのは、簡単ではないであろう。このような能力は一定の環境の中にあって成立するのである。それは、マーケッタビリティ能力=市場価値である。そして、経済環境でぐるぐる変わるものである。

2)一方、普遍的な能力とは、コアスキルと言える。

親が金持ち・政治家 という立場は能力なのか?七光りブランドという能力かもしれない。

しかし、ここでは、分析力、理解力、説明力、コミュニケーション力、適合力、体力、胆力、鈍感力など、コアスキル=資質の部分と捉えたい。

人は、生まれてから、いろいろな局面でコア能力を磨いてきていると思うが、マーケット能力は、どの業界の会社に就職したか どの業務に配属されたかなどで運不運がある。また、時間軸の長い基礎技術のスキル化、短期に入れ替わるような応用技術で生きてきたかでも違うであろう。マーケットスキルは旬な状態に維持する あるいは 旬なうちに売り切ることが必要だ。

B-2:雇用社員の企業内ポジションニング (図6参照)

1)右上:活躍している人

このページ記事を読んでいただいている方々は、右上側(能力があり活躍中)であると信じる。頑張っていただきたい。

2)右下:不満をイノベーションに変える可能性のある人

もし、右上(緑)でなく、右下(青)だとしても、能力があれば、ハングリー精神で活躍機会はいっぱいある。自分と価値観があう経営ビジョンの会社に転職することもできる。(参照サイト:経営スタイルとビジョン

自分で起業もできる。この方々がイノベーション候補なのである。能力あって冷遇されている人は リベンジのモチベーションと機会を得たら強い。

(図6は、社内でなく社会でも同様に通用する。日本で不遇なひとは、海外でのチャンスをあり?)

3)左下:再生を頑張るべき人

左側に位置する(新人以外)方々は、厳しい状況である。特に左下の方々は、実力をつけるしかない。追い出し部屋にいる人は、その部屋にいられる間は、開き直って勉強しなおすことだ。終身雇用、年功序列賃金、手習い教育で育てられてしまった意識を自ら改革すべきだろう。

一番いいテーマは「なぜ、わが社は、追い出し部屋を作る羽目になったか、そしてなぜ私はそこにいるのか?」あたりではないか? 自分と会社を客観的に、レポート50枚か100枚かにまとめられれば、再出発の力量が育まれるであろう。(だって、今まで、それほどまでに真剣に「考える」をしたことはなかったであろうから)

4)左上:現状維持の平穏を願う人conference-41717_1280

そして、たぶん人生で一番かわいそうなのは、左上象限の方々ではないかと思う。

これら普遍的・相対的な能力のない人が、その能力に見合わない役職や給料をもらっていること?そこが問題なのである。

成り行きで管理職や役員になった人と追い出し部屋にいる人の違いは、処世術のうまい下手なのである。

そして処世術という技術は、ICTやSNSの進展で見える化された社会では、だんだん通じなくなってきているのである。(身近な社内の人、マスコミに出てくる人など イメージすると結構います)

B-3:社会の中での雇用の在り様

1)過去の反省が必要man-273398_1280

スキルのない社員の存在は、人生二毛作でのべたように終身雇用の前提のもとにスキル育成、能力開発をしてこなかった「高度成長期(1960-1990時代)の日本企業」に理由がある。追い出し部屋社員に自己反省は必要であるが、失われた20年代の経営層も一端の責任を感じるべきである。(もう引退されているかもしれんが?)

実際、いま 雇用の流動性を鋭く提言していのは、40-50歳の流通やICTの若き経営者であり、60歳以上経営者からの発言は少ない。

2)格差の是認も必要

成熟時代から新規ビジネス成長時代に移行するには、改革であるから何らかの痛みはある。既存から新規への移行には格差がでると認めることも必要だ。

正当な理由があるなら、つぶれるべき会社はつぶれていい、それが自然淘汰である。経営者も社員は、緊張感があったほうがいいし、過剰な解雇規制は活発な(中小)企業活動に縛りをかけることになりかねない。

3)ワークシェアは いいのか?

効率を高めると失業がでてしまう。ゆえに デフレ下でのワークシェアリングという概念が一時期あったがどうなんだろう。まず、これは短期的なパッチとしての手段である。

そして、ワークシェアリングは、「人材」の議論であり「人財」の議論ではない。人材として活動している労働者(ルーティンワーク作業者)については、セイフティネットとしてのワークシェアリングはありだ。

しかし、人財としての要員は、リスクとチャレンジの世界で活動すべきである。

4)政治の責任

格差は悪いといって、単純に保障するというのは愚かな政策であり、格差をハングリー意識のばねに変え、跳ね返す。再チャレンジを進める政策が必要なのである。

4-1)セイフティネットをはる =政治の責任men-102441_1280

4-2)働く場所を作り上げる =経営者の責任

4-3)働く意欲と自信をもって臨む =本人の責任

政治は、格差を、瞬間的なものとし、さらに 速やかにイノベーションを起こせる環境としておくことである。円安、エネルギー政策、もちろん 医療規制などは緩和すべきである。再チャレンジする、がんばる人の足を引っ張る政治、頑張る人の活動環境を作れない政治はいらない。

【C:結論】

これからの成長は量の拡大ではなく、質の変化である。

事業サイクル(寿命)が短命化している(=時間スピードが速い)ために、一つの会社が、同一事業で長期政権を目指すより、いくつもの事業を展開(成長→成熟→終了)で切り替えてゆく。

その展開は、伝承に変化を加えて、伝統にしてゆく形。ストーリーのある変化や新規展開である。(歌舞伎の伝統は、既存をしっかり伝承しつつ、変化を加えて新しい形を作るのだそうだ)。

故に、社員も自分を変化させてゆくしかない。幅広い流動を意識を持つ社員と、それを可能にする社会環境が必要である。

IBMでの例でいえば、HW売りの営業が、SW売りの営業に、SIサービスの営業に、 アウトソースサービスの営業に、クラウド営業に、、7変化できるか? である。

そのとき、同じ会社の中だけの動きでは、適用できない時代=流動性の時代が到来したのだ。

以上